脱むー通信/ちゃんくみ個人ブログ

日々のあれこれやポッドキャストのこと #脱むー

セブンティーンアイスとスイミングスクール

  セブンティーンアイスの自販機を見ると、小学生の頃に通っていたスイミングスクールを思い出す。
  水泳はべつに好きじゃなかったけど、終わった後、セブンティーンアイスを1つ買ってもらえるのが嬉しくて、毎週嫌がらずに通っていた。特にストロベリー味が好きだった。100円程度のアイスで習い事が続くんだから、子どものモチベーションってすごく安い。


  そのスクールには看板コーチみたいな男性のコーチがいた。(仮にKコーチということにしておく)Kコーチは20代後半くらいで、ひょろっと背が高く、水泳のための必要最小限の筋肉だけがついているという感じだった。イケメンではないけど、すごく気さくで愛嬌があって、人気者。いつも子どもみたいに生徒とじゃれ合っていた。
  練習が終わると、子どもたちはみんなプールサイドにあった乾燥室(サウナみたいなところ)に押し込まれる。そこにぶら下がってる天板を手のひらで触ってジュッっと鳴らしてみんなをビックリさせるのがKコーチのお決まりのネタだった。私はそれを見ると毎回、腹がよじれるほど笑ってしまうのだった。


  小学校2年生の秋、スクールでは参加者を募って日帰りの遠足に行くことになった。引率のコーチの中にKコーチの名前もあった。Kコーチと一日中遊べる魅力的な行事。私はお母さんに「絶対行きたい」と言った。でも、お母さんは「ダメ」と言った。うちのお母さんにしては珍しく、理由は告げずに、ダメ、とだけ。今考えるとその頃は離婚の直前で、お母さん一人で家計を支えていたから、スクールに通わせるので精一杯で、遠足のお金を出す余裕がなかったんだと思う。でもそんな理由があるなんて知らない私は泣きに泣いた。地べたに這いつくばって泣いた。もう、顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃで、しゃっくりも出た。一生のお願いだからと何度懇願しても結局お母さんはダメ、と言うばっかりだった。


  後日、遠足の様子を写した写真がスクールの廊下に張り出された。私は悔しくて悔しくて、なるべくそれを見ないよう目を伏せ早足で廊下を歩く。練習では、遠足に参加したメンバーがKコーチと前より仲良くなってるみたいな気がしてさらに悲しくなった。Kコーチが乾燥室で天板をジュッと鳴らしても、ちっとも面白くない、と思った。
  数ヶ月後、廊下に張り出された写真が剥がされる頃には、なんであんなに遠足に行きたかったんだっけと思えるぐらい、すっかり落ち着いていた。クラスが一つ上がってKコーチとあまり顔を合わせなくなっていたせいもあったのかもしれない。新しいコーチは若い女性で、面白くはないけど、すごく優しかった。新しいクラスでは友達もたくさんできた。スクール終わりに買ってもらっていたセブンティーンアイスは、いつのまにか紙カップに入った甘いアイスカフェオレに変わっていた。

  そして、小学校3年生に上がると同時に私はスイミングスクールを辞めた。